建築で云う製品検査というのは、サッシュや鉄骨製品など、工場で作られるモノが図面や打合せ通りできているか、わざわざ工場まで出向きチェックすることです。ですから、やる気になれば、便器や外壁材などどんなモノでも可能ですが、通常、既製品は対象外。その建物のために特別に製作したものが対象となります。
しかしある時期、製品検査は「接待」を意味してました。
宮脇檀建築研究室に入所して2年目の夏。
はじめて受け持ったアパレルの店舗兼事務所ビル、総額7億円くらいの物件でサッシュやトップライトの製品検査をしに大林組の所長と二人で立山に向かいました。しかし、我々を待っていたのは、温泉とコンパニオン。
いや、一応、工場には行ったんです。しかし社会科見学のような工場見学をするばかり。
「え?検査するサッシュは?」
私の驚きをよそに所長はうそぶいてくれます。
「あれ?工場間違えちゃったかナ」
その後、ファスナーの工場見学までさせられて、ボタンの替わりにファスナー仕様になったYシャツをおみやげにいただき、夕方、まだ明るいうちに温泉に入っていました。
夕食は日本人のコンパニオン3名付き。
サッシュメーカーにとっては施工会社が請負先になるので、接待するのは大林組でいいのですが、施工会社としては、設計事務所が検査するという名目できていますから、大卒ほやほやの若造であろうと私を立てます。
上座に坐ると、黙ってコンパニオンが両脇に寄り添ってきました。
上座に坐る経験も、コンパニオン付きの夕食も初めてですが、「力学」というのを垣間見た気がしましたね。 上座の力学。
夕食後はフィリピンパブ。今度は4〜5人だったか?よく憶えてません。
翌日はトロッコ電車に乗って黒部渓谷。ほんと、なにやってんだか、、って感じです。
時代(とき)はバブル。社会人って、、、いろいろ考えちゃいましたね。
で、今回の『Salonのある家』では、鉄骨階段の製品検査に行ってきました。
行った甲斐があったというか、段板の取付位置に間違っている箇所があり、是正を指示。まぁ、間違いはあるものです。問題はそれを的確に対処できるか?見劣り無く修正できるか? です。
その他、キャットウォークの手摺やレンジフードの吊りパイプの打合せをしてそのまま現場に直行です。
朝いちに、工場の最寄り駅で待ち合わせし、現場を離れたのは夕方6時過ぎ。ハードな一日でした。
ちなみに今回の検査でいただいたものは、缶コーヒー1本のみです。