2007年 10月 06日
やかん・あかん
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我が家のキッチンは狭く、天板の長さは1,800ミリしかない。クックトップと壁際との間も7センチほどしかなく、鍋ややかんを置くこともできない。
使用してない鍋は重ねてクックトップ下のオープン収納に置いているが、やかんは使用頻度が高いのと収納スペースに空きがないこともあり、いつもどこかを彷徨っていた。
廃材を利用したスツールが我が家にきた時から、それは、坐るためのモノではなくやかんや熱い鍋を一時的に置く場所となった。
長男が歩き始めた時から認識はしていた。 アブナイゾ と。
キッチンはリビングの一辺にへばりつくように設置されてるためチビの侵入を防ぐことはできない。
瓶物を抜き取り、抽出を開けようとし、ゴミ箱を漁る。そして、スツールの上に鍋ややかんが置いてあれば触ろうとする。その都度、移動させていたのだが、ある時ひっくり返されてしまった。スツールから落下したやかんは取手の付け根部分が壊れ、寂しげに本体の横に転がっていた。
彼が悪いのではない。起こるべくして起こったのだ。
初めに考えたのは「どうやって直すか?」ということだった。
ステンレスの本体にプラスティックの取手が付いてること自体無理がある。長い目で見れば、いつかは熱による劣化で壊れていたかもしれないのだ。そう考えるとステンレスの取手を新たに作り、アルゴン溶接するのが望ましいが、もちろん自分ではできない。誰かにお願いするよりほかない。
しかし、いまの日本で、こんな些細な事を引き受けてくれるところがあるだろうか?もしあったとしても修理代は、建築の見積りをとっている経験上、結構な金額が予想される。
知り合いの工務店に訊いてみると、送料や消費税を入れると、15,000円くらいになりそうだった。
悩ましい。かなり悩ましい。
できることなら修理して使い続けたいが、15,000円あれば他の新しいモノを買うことだってできそうである。それに、壊れてしまったやかんは、MoMAのオンラインストアでUS50ドルくらいで買ったものなのだ。50ドルで買ったモノを三倍近い値段で直すというのも・・。
私が購入した当時はMoMAもまだ日本語のページがなく、日本での取扱いもなかったと記憶しているが、少し前まで製造元であるDANSK(ダンスク)が小売りしていたようだ。現在は生産中止になったらしく、デパートはもとよりMoMAにも表示はない。
念のため電話で確認したが、扱いはおろか、修理の受付すらしてもらえなかった。
私の思考は徐々に新たな製品へと移っていった。
アレッシー、ブラバンシア、パイレックス、ボダム、オクソ。
柳宗理やINOXケトルなど、新旧、知っているものから初めて見るものまで、少しでも食指が動くものをピックアップしていった。
もちろんマイケルグレーブスのバードケトルやマリオベリーニのパームハウスケトルなど建築家がデザインしたものも新たな眼線で見つめ直していた。
しかし、ネットはもちろんのこと、六本木のリビングモチーフや新宿のコンランショップなどのセレクトショップにも足を運んだが、結果はどこも似たようなものだった。
実は、ダンスクのやかんがとびきり気に入ってるというわけでもない。フォルムだけならもっとエスプリの利いたモノはありそうに思う。
ただ、何年も使ってきただけに愛着はある。円筒形というカタチも容量を確保する上で合理的であるし、普通は付いている注ぎ口のでっぱりも無いので場所を取らない。愛用している銅鍋同様、効率重視の我が家のキッチンにおいて、なくてはならないものになっていた。
この一ヶ月半の間、いろいろ探し回ったがコレ!というものには巡り会えなかった。
そして毎日、取手のないやかんを耐熱グローブやミトンで抱え込むようにして使ってるうち、なんだかこのままでもいいかな、と思えるようになってきてしまったのだった・・。
by siteplan-archi
| 2007-10-06 14:33
| 道具,モノ